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悲しみの終着点は歓びへの執着さ

- 『目が明く藍色』 / サカナクション

旅路の果てには希望かそれとも:『旅する海とアトリエ』11話に寄せて

Category: 漫画 感想 布教

旅する理由って、色々あるんですよね。
ボクの場合は特に何も考えずにふらりと小旅行した時もあれば、漫画やアニメの聖地を一目見たさに遠出したこともあるし、友人と一緒に「楽しい」を共有したくて旅行したこともあれば、少し気が重くなった時それを振り払うためにちょっとした旅に赴いたこともあるし。

強いて言うなればその「気が重くなった」更に延長線上。
自分自身の悩みや迷いを払拭・解決しようと旅する女の子たちがここにいる。

1話扉絵

それが『旅する海とアトリエ』。

大事なことなのでもう一度。
まんがタイムきららMAXで連載中、『旅する海とアトリエ』
現段階ではまだ単行本すらない(時期的に1巻は秋頃かな)『海リエ』の感想を、今回は布教の意味合いも込めて記事にまとめます。
もちろん1巻が出る頃にまた改めて紹介記事を書くと思いますが、今回はとりわけ情報量の多い本作に関する記事の肩慣らしみたいな感覚で。

10話までのあらすじ

今日時点で最新の回が11話だし、今回はどうしてもあらすじが必要だなと思うので、ちょっと掻い摘んでご紹介。

自分の名前を好きになるために、自分の元に残された写真に映る海を目指して旅を始めた七瀬海。
自分が好きで描き続けている絵に蟠りができたことから旅に出ていた安藤りえ。
ポルトガルはリスボンにて2人は偶然出会い、目的を異にしながらもフィーリングによって旅路を共にすることに。
スペインでは百合クラ写真家のエマに様々な名所を案内され、笑顔あり涙ありなひとときを過ごした2人は次なる目的地・イタリアを訪れて、
エマの紹介によって新たな案内人となったマリアと旅を続ける真っ只中。
そこでりえはふと、海と打ち解けたハズのマリアが未だ自分には警戒心を隠さないことに引っ掛かりを覚えて……

ここで11話について、いつも通りの感想を

すったもんだありつつも、扉絵はただただ和やかだよなあ。
海さんとりえちゃんは最初から魅きつけ合うところがあったんだろうけど、それでもこの距離感を見ると本当に優しい世界。

11話より

(旅モノとしての側面は「改めての紹介記事」に預けて今回は割愛)

この「鉄道連絡船」を心行くまで楽しむ海さんとりえちゃんも、デフォルメされてただただ可愛いんですよね。
ただ、そんなりえちゃんも肝心な時は流石のしっかり者。「一回船から落ちてる」海さんに我を忘れてはしゃぎすぎないように釘を差す辺りはさながらオカンのようである。
(補足ですが、りえちゃんは海さんより5歳年下です)

そんなりえちゃんにも、どうやら引っ掛かることがあるようで。
「海ちゃんと仲良くなりたいなら私とも仲良くなって」って発言が、海さんに対してもマリアさんに対してもちょっと重い。
そんな本物の思いにはボクも感想として複雑さを隠せないけれど、何だかんだでニッコリ。

一方のマリアさんも、服飾に心打たれてデザインの道を志したまでは良かったものの……というところまで示唆がなされてそっちにもニッコリ。
りえさんと打ち解けられないのではなく、どうやら海さんにそれ以上のシンパシーを感じているようです。
そしてマリアさんの見据える先には、まさに推察の通り言い知れぬ深淵を抱えつつも、某名所の圧倒的な光景を前に自身の希望へ向かおうとする海さんの姿。

P53-5の台詞は今まででも一番好きになりました。

来る1巻に向け、ちゃんとした紹介記事の布石として

11話より

『海リエ』は各所に、こういった精密な描き込みの風景があります。
そして海さんは目にしてきた名所や風景への思いを持ち前の感受性で実感を込めて表現・代弁してくれます。
こんな高品質の風景描写が、主人公の1人である海さん本人やその人間味・実在感と相互補完するという、間接的な形でも活きてくる芸の細かさが本作の大きな魅力の1つでもあるんですが、先述したP53-5の1コマはそれによって際立つ海さんの言葉がシンプルイズベストなモノなんですね。

無理を承知しつつ強引に一言でまとめてしまえば、とにかく「贅沢」なことに尽きる『旅する海とアトリエ』。
今からでももちろん、1巻が出た暁にはぜひその魅力を感じていただきたい。
つい仄かに百合を感じさせてしまうような文言も飛び出た気がしますが、それすらも本作の一端に過ぎませんので。

Written on 2019/07/19