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「身体一つになっても喰らい付いて倒す。その心そのものが仮面ライダーなんだ」

- 『仮面ライダーW』48話 / 左翔太郎

母娘と夢の物語:『こみっくがーるず』原作80話

Category: 漫画 感想

3巻の頃以上に輪をかけて弱気なV先生だけれど……
苦難の道は多分、まだまだここから。

80話より

良きにつけ悪しきにつけその展開に散々目を回されてきたこみがも、ここに至り幾分落ち着いて目を通せるようになりつつあるかもしれません。
前々回でだいぶ落胆して、その分を取り返した前回で燃えて、と揺り戻しが大きすぎたからかな。
何度も言うようですがV先生のまんが家道に関してはかなり大掛かりな仕込みがなされていますし、ボク自身以前記事1つ割いて考察を書いたくらいなので、重要なターニングポイントとなった今回もきっちり注目箇所を押さえつつまとめていきます。
しかしいくら気に入ってる作品っつったって3ヶ月連続してブログ記事に感想がっつりまとめるのはそれだけでも流石にしんどい

夢と娘と勝木母

言うに及ばない今回のキーパーソン、勝木母。
彼女が過去に夢として女優の道を歩んでいたことは既に示されています(3巻、P101-4)。
で、そんな勝木母は自身が敷いたレール通りの道を娘である翼さんに強要していた。
順当に考えれば、それが何らかの事情で自らの道を断たれたゆえであろうことは想像に難くなかったでしょう。

ここで1つ想像と違ったのは、勝木母が夢そのものに対する悪感情を抱いたりはしていない点。
ボクはてっきり、勝木母が自分の納得行くように活動できなかったり、鳴かず飛ばずでその道を諦めざるを得なくなってしまったりしたために夢そのものを厄介視するようになった、と睨んでいました。
しかし実際は「うまい話をもってくる大人」へのトラウマのようなもの。勝木母本人の問題より、彼女を取り巻く環境的要因のほうが大きかったことを思わせます。
であるからして、ただ親としての責任と娘の背中を押したい望みの間で板挟みになっていたのではなく、夢を追う娘の姿に不安はあれど同時に理解を寄せており、やりたいようにやってほしいという思いもその分だけ確かに秘めていた。
この辺り「(翼さんが)若いうちは」と条件つきではあるものの、そもそも37話(3巻)でもその片鱗が窺えていました。 だからこそ、自分の娘が不届きな輩の毒牙から離れたあたたかい環境で夢を追いかけられていると分かり、勝木母はすんなりと自身のスタンスを転換できたのですね。

反面、母娘の問題もこれにて万事解決、とまで早合点はできません。
娘を応援する姿勢こそ今度は明確に表しましたし、またおそらく編集さんに『暗黒勇者』の動向を聞かされ「娘はあと1年でまんがを辞められる状況ではないしそれで終わらない技量をもっている」みたいなことを察したりもしたでしょう。これで過保護が適度に鳴りを潜めたら翼さん視点では幸いかな。
なんですが、勝木母のあの発破のかけ方(P38-3)は……「わかりにくい」と言うか、とてもストレートなエールに見えない。
当然その理由には、翼さん側の事情も大きく関係しているワケで。

夢と母親と翼さん

勝木母が素直に娘を応援できていない理由。これも37話で既に言及されていました。
母親への憎しみまでこめて『暗黒勇者』を執筆してきたまんが家、それがウイングV先生だからです。
過保護な母とそれに反発する娘の構図及びそんな二人の溝は、あの後も全く変化していません。
それどころか今回も根本的な解決を窺わせる描写があったかと言えば微妙で、せいぜい「母親が母親であるゆえに自分のためを思って過保護を貫いてきた」と肌で感じた程度。
つまるところ翼さんから勝木母への憎しみが、またこの先の『暗黒勇者』がどうなるかは、尚も予断を許さない状況のハズです。これが1つ。

もう1つの理由は、決して『暗黒勇者』のアニメ化が作品そのものの成功を意味してもいなければ、況んやV先生のまんが家としての成功を意味してもいない点。
まんが家が不安定な職である事実への憂慮や、V先生の作品に表面化する欠点なども、同じく37話で指摘がなされています。
そして今回、勝木母が翼さんに向けた件の発破はこうでした。

「ここまできたら天下とりなさい 少年まんがの」

やはりV先生の現在のまんがを認めた節はどこにもありません。その上言うまでもなく、自作品がアニメ化すればこの先まで安泰などと見くびったりしてもいない、この理想の高さ。
これらを踏まえると、勝木母が娘への見守り方を方向転換させた一方、翼さん側の問題は今回時点でほぼ何も進展を見せておらず、あとはただアニメ化の報せに関する落ち度を不問にされただけの顛末が結論として浮き彫りになります。
名実共に一件落着したのは最後の点のみ。勝木母娘の確執はまんが家継続問題に限れば差し当たり事無きを得たと見られもしますが、自分の進退さえ周囲の協力もあってやっとどうにかできたレベル。V先生が真に成長していくための本当の勝負はまだまだこれからと言って良いでしょう。

さて、ここで勝木母娘から視野を広げてみて一言

……ああまで勝木母と正反対な親莫迦兄莫迦な父兄は何なのだ。まるで勝木家の普段の様子が予想つかんぞ。

終わりに

久々に出た「呪いの装備」もとい可愛い服を着ることに拠るV先生のデバフ然り、お祝いのダンスを(翼さんの身内なので)一緒に踊れる小夢ちゃんの面白判定然り、あんまりに弱りすぎたV先生の「出たくないよぅ原稿の催促だよぅこわいよぅ〜」なんて迷台詞然り、文字に起こすのすら気恥ずかしさを覚えるV先生の担当さん然り、走れメロスにも引っ掛けた導入とオチ然り、まあ今回もツッコミどころ豊富で愉快なギャグの数々は相変わらずでしたが……
その中でも目から光線、に見せかけた眼力で琉姫さんを焼き尽くす勝木母は笑いどころの面で今回のハイライトでしょう。前回のアレ(先月号P36-4)がまさか前フリだったとは。あそこだけはブログに先んじてああしてでも触れておきたかった。

加えてもう1つ。P39-6、両手で顔を覆って震える翼さんの姿について……あの時翼さんは果たして何を思っていたのか。
またもや可愛らしい装いと情けない振る舞いを晒してしまいやっぱり恥ずかしかったとか、自身の過失を許されて安堵したとか、母親のこれまでの言動が自分を思いやっていてこそだと知って嬉しかったとか、あるいは母親への憎さがあったことから逆にそれで戸惑ったとか、はたまたその母親から今度はまんがについてもプレッシャーをかけられて怯んだとか、色々と渦巻く感情を想像できます。
弱々キャラが力を得て奮戦する展開はボク個人としても好物の1つなので、今後また一段と注目。いやまあ元々そのポジションはかおす先生であって現在のV先生はここ2話で弱点突かれまくったからHPとMPを削られてるだけですが。
とにかく、頑張れV先生。

Written on 2020/03/24