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「こんなに喜んでもらえるなら お刺身以外の料理ももっと教わっとくんだったな」

- 『スローループ』1話 / 海凪ひより

岐路に立つ先生と生徒:『しょうこセンセイ!』35&36話

Category: 漫画 感想

先月の感想を書き終わった後「あー、これはブログ送りにしてもいいくらい纒まりの良い回だったな」と、ちょっと迷いが残ったまま一読した最新36話。
正直やっちまいましたね。継子さんも、リベット視察官も、サクラバ所長も。
今回矢野さんがハイテンションだったのと相俟り、一読者としては癒しすらも超えるほど爆笑しつつ、まさに作中視点では「肝が冷える」展開。

他方前回を踏まえた基軸、ひいては27話以降のエピソード全体を通した基軸が今回見えてきています。
こういった点をしっかり特筆する意味でも、やはり文量はなるべく割いて感想を書いていきたい。

矢野さんが選ぶ道=矢野さんの進路

今回のエピソードで、実はお嬢様であったと明かされた矢野さん。実際ちょっと意外。 どちらかと言えば引っ込み思案ではなく上がり性なだけで、根もお淑やかというよりおてんばに見えるんですよね……
直接的であれ間接的であれ、親御さんには堅実な進路を選ぶよう日頃から言われているんでしょうか。

そんな矢野さんがしょうこセンセイの誘いによって訪れたのは、久方ぶりに出張った印象のにじみ先生です。
しょうこセンセイの解釈バトルを通じて、矢野さんはにじみ先生から「表現せずにはいられない」モノがあると指摘されました。
9話でも宿題用ノートに漫画を描いていた辺り、描きたいと感じたら既に描いている癖があるのだろうなと示唆はされてしましたが、憧れのにじみ先生を前にしても解釈について譲る様子のなかった矢野さんのこと。
「やりたいことがないわけじゃない」なんて程度ではなく、本人の心はしっかり何か表現したい願望を向いていたワケです。
にじみ先生に矢野さんを引き合わせたしょうこセンセイのやり方は最適解だったと言えるでしょう。そして、矢野さんの根底にある表現欲を見抜いたにじみ先生もまた、プロ作家の経験に裏打ちされた見識を備えているんですね。飲んだくれたちと一緒にしょうこセンセイの手を借りまくっていた14話とはエラい違いである

ところで、思えばしょうこセンセイのほうで物語が動く兆しを見せた時、矢野さんは本当によくそこへ関与しますね。
2巻を通じ、しょうこセンセイが「時には周りを頼る大切さ」を自覚して1つステップアップした際にも、生徒の中でしょうこセンセイへの理解度が最高レベルに入る矢野さんの、終盤果たした役割は大きかった。
今回は反対にしょうこセンセイが矢野さんを導いた形ですが、やはりしょうこセンセイ側は研究室絡みで何やら不穏な気配が……

しょうこセンセイが選ぶ道=「高校教諭か研究職か」?

その「しょうこセンセイやリベット視察官が在席していた研究室」では、しょうこセンセイを研究の道に引き戻す前提で話が進んでいました。
ここで改めて思い出しておきたいのは、その前提に視察官が一枚噛んでいたことです。曰く、先生職よりも研究職に就くべきだとして、リベット視察官は日本にまで出向いてきた。そしてそれがなあなあになったまま除籍され今に至る、と

そして同じくしょうこセンセイの進退に影響を与えてきたのが、他ならぬ継子ママ。
義務感で研究職の道を選ぼうとした嘗てのしょうこセンセイに、継子さんは「いろんな物を見てきてほしい」と願って大学進学への道を提示しました(32話)。 この2人に左右されて危機を迎えた研究室、不幸と言うか何と言うか……前回の「私いなくてもなんとかなるっしょー」は完全にフラグでしたね
しかもそれはそれとして今回ラストのサブタイ「ダメ所長」は笑う。リベット視察官を除籍した張本人としては確かにやらかしてますが……まず前回しょうこセンセイが見せた危惧を遥かに超えるレベルで割と皆が皆やらかしてるような……

そんな研究室の皆さんによるポンコツぶりはさておき、話を戻しましょう。
継子さんの願いを受けて(物語開始時点より2年前に)大学へ入り、「いっぱい悩んで」「いっぱい迷って」その結果教職の道へと進んだしょうこセンセイ。彼女は今、リベット視察官の登場もあって研究室へ所属する選択肢を改めて打ち出されそうですね。しょうこセンセイは生徒たちと同様、どんな道を取るかの岐路に再び立たされていたのだと見えます。
一方でそんな視察官をして「視察する必要はなかったかもしれませんネ」と言わしめるほど、今のしょうこセンセイ本人は熱心に高校教諭の道を歩んでいるのも事実。

更に前回も改めて示された通り、しょうこセンセイと継子さんの間には、もはや説明不要の親子愛が育まれています。
ただただ義務感を理由にして研究の道を志していた頃と決定的に違うのは、親子愛の何たるかということも、自分の選べる道が様々であることも、しょうこセンセイ当人が身に染みて理解している点です。
それを踏まえ、2年前よりも入り組んだ事情を伴って匂わされた「高校教諭か研究職か」の分岐点。
しょうこセンセイの今後を、更に刮目しながら読んでいきたい。

終わりに

直近のエピソードを読み解くに当たり、しょうこセンセイの過去が明かされた32話の影響はやはり大きかったため、要所で印象的な台詞を拝借しながら今回も記事を書いてきました。
そんな中最新話で現れた「一緒に悩んでいきましょう」という台詞は、しょうこセンセイが確かに大学で「悩みながら」進む道を決めた現れなのだろうな、と2つのエピソードを関連づけて見ながら本当に感慨深くなりました。
その32話、ラストのサブタイは「笑っていられる道」でしたね。読み返してそこにもちょっとウルッとしたのは内緒。

そして余談。
今回の個人的可愛いしょうこセンセイ大賞は、頬を緩めて微笑む表情(P152-3やP153-4)に上げたいと思います。前回のエピソードでも近しい表情がありましたし、あれが可愛かったので誕生日イラストにも描いたくらいなだけに、大きな癒しとなってくれました。
笑いどころのほうについては今回枚挙に暇がなく、片っ端から拾っていたら過労死しそうなので、感想でのツッコミは割愛させていただきます……多分皆さんがツッコんでくれているでしょうし
それでも1つだけ上げるとすれば、矢野さんから継子さんへの「おママさま」発言でしょうか。何て奇矯すぎる呼び方だ。

Written on 2021/02/23