Unlock the door to Creation

「良い作品が当たるとは限らないし……その逆も然り……」

- 『SHIROBAKO』20話 / 木下誠一

スローループ「公称」アニメ化の話

Category: アニメ 漫画

※本記事は人を選ぶ話題が多く含まれていますので閲覧にはご注意ください。不快感を覚えた方は遠慮なくブラウザバックをよろしくお願いします。

さて。いきなりですが、ボクは漫画『スローループ』がとても好きです。
弊ブログや、Twitterでの言及をご覧になっている方には、ボクがどれだけスローループを気に入り、また漫画作品として推薦しているかをご存じの方もいらっしゃるでしょう。

遡ること1年半ほど前。2020年12月24日、本作にアニメ化決定の報がもたらされました。
原作の客観的な魅力の一端を知っており、かつそれをなるべく筋道立てて語ってきた (自負のある) ボクとしては、いつか何かしらのメディアミックスが行われ、作品についてより広く周知されるための施策がなされるのは当然と言ってすら良かった話。
一方、より広く周知される機会とは即ち、作品外においてその後の作品の行方を決める1つのターニングポイントになり得るため、その仕上がりがいかばかりか非常に気がかりとなる胃の重い報でもありました。
これについては、今年1/7の放映開始から3/25の最終回まで、腰を据えてまとめる必要があると感じながら、書くべきか書かざるべきかと思案してきましたが、諸々の事情を鑑みて「書く」選択を取ることとします。

今日現在「きらら」のレーベルを俯瞰した際、客観的に見てその完成度は最高水準であり、他誌のエース作品とも渡り合っていけると言って良い本作の原作に関して、ボク自身映像化にはかなり高い理想をもってもいたところがあり、不快感を覚える覚えない以前に、色々思うところある方もいらっしゃると容易に推察できますが、お付き合いいただける方は何卒。

概要

前提として、ボク個人のアニメ化に対するスタンスは

また本アニメ化への評として、当記事の本旨は

以上で概ね全てが簡潔に解説できます。

これをご覧になっている原作未読の方向けに (おそらく皆無とは思いますが) 説明しておきますと、本映像化は動画として最適化されていない、漫画原作として言うなら漫画的表現などを伴ったまま、ただ映像に起こしただけの箇所が大半であり、しかも肝心要の場面ほどそうなる傾向が強く、視聴時に感じられたであろう魅力はほぼほぼ例外なく原作の時点で存在しています。こういった作品は原理的に、最高評価が「原作の完全コピー」にしかならない上、通常漫画とアニメの媒体のギャップによってそこにすら辿り着けず「劣化コピー」の域に留まってしまうものです。
これらの点から、個人的にはこのメディアミックスを「アニメ」と呼ぶ気にならないゆえ、タイトル等で「公称アニメ」と銘打っています……
が、煩雑化を避けるためやむを得ず以下では「アニメ」の記述を用いることとします。

News1 アニメ化決定

この時の所感は上述した通りですが、思い出話として少々補足。
当時、時期的には同じフォワード作品の実写化が話題になった記憶も残っており (TVドラマのほうはともかく映画化されたほうの作品はボク個人からしても上手くまとまったと言える映像化でした) 、冗談半分本気半分で「スローループもドラマ向きなんじゃない」と近しい方々との間で話されたりしていました。
そういう世界線も面白かっただろうなあ。

同時に、映像作品となった本作がどこまで物語を進めるのかも自然と想像が行ったもの。
特に導入であった1話や、本作のシナリオの一端を決定づけた名篇の1つである7話などで、アニメオリジナルの描写が足されつつ、姉妹の物語における1つの節目である原作21話 (3巻ラスト、アニメでは8話) と、家族4人の物語における1つの節目でもある23話 (4巻2話、アニメでは9話) を混ぜ合わせて一区切りになるのがちょうど良いかな、といった具合でした。

News2 放映時期・ティザービジュアル・制作陣公開

日付を振り返ってみると、2021/05/21。だいぶすっ飛んだ感じがありますね。

原作読者でアニメ視聴を欠かさないうちの1人の方は、制作陣を一見して「この作品のアニメとスタッフが共通してます」といった話をすぐにされていました。
当のボクは制作陣の過去作を振り返ったり、及び制作のCONNECTがSILVER LINKの一部署的存在である点を踏まえたりしながら「良く言えば手堅いし悪く言えば化けない」「美術には拘ってくれるのかな」「監督の意向はどうなるだろう」と考えていたように記憶しています。

が、それより大きかったのがティザービジュアル。これでじわじわとボクのテンションは落下の一途を辿り始めました。

ひよりがカッコよくない。
可愛い女の子であると同時に、(特に釣りを嗜んでいる時や真剣な場面では) 只管カッコいい表情を見せてくれるあのひよりが。ここまで童顔になるとは。

今からするとたった1枚の絵で何を、とも思ったりしますが、これはキャラデの方が描いている、制作陣全体に対しても一定の影響があると推察される絵。
その立ち絵で (アングルがアングルのためまだ確信できてしまうレベルではありませんでしたが) 、作中様々なカッコよさを見せてくれるひよりが、ビジュアル面で可愛いだけの女の子になってしまう……そんな可能性があるだけでも、ボク個人の中では重大な危機と位置づけられてしまいました。

結果、以降3ヶ月ほどはドン底数歩手前のテンションで次の報を待つ羽目に。

News3 キービジュアル1・制作陣2・メインキャスト・登場人物立ち絵・PV1公開

日付で言えば2021/08/24。
PV1により、ひとまずはひよりの懸念が払拭。立ち絵はティザー同様童顔でしたが、キャラデの方が嗜好や手癖でああいうキャラ作画にしがちだったのでしょうか。
また、美監の過去作に美術面で目を見張ったタイトルがあったりなど、後々思い返して期待が高まった部分もあったりしました。

一方、演出や音響面の雰囲気を汲み取った限り、良くて原作の長所に胡座をかいた、アニメとしては凡百の出来栄えになる推測が大きくなってしまったのもこの時。
表向きの明るさと共に、穏やかさと情緒的な感傷をも押し出した作風を想定していたのが覆った形でした。コミカルさ前面でテンポ的にも芝居的にも軽い掛け合いが目立った印象、と言うべきでしょうか。
無論それでも映像作品として上手くいっているなら、ボク個人の感性と違っただけで笑い話になったでしょうが、作品として「穏やかさ」を欠く = 必要以上に物語を早く進めるのは客観的に見ても本作の本質的な味わいを損ないかねず、危険であることは事実でした。
そうして、別ベクトルでの懸念が頭を掠め始めた頃でもありました。

キービジュアル2・PV2公開

そんな危惧が的中してしまったこの日、2021/11/22。
キービジュアル2の舞台は紅葉狩り釣り女子キャンプ。これはつまるところ、アニメ化範囲が4巻ラスト以降にまで伸びるという、原作1話1話の濃密さを考慮すればあまりにも過剰な詰め込みぶりを意味していました。
これはキャラデへの個人的感覚より遥かに、客観的問題になり得てしまう致命的可能性であるワケです。

ティザーばりに不思議なアングルから見るキービジュアル2の仕上がり、相変わらず自分の感性で想像していた作風とは趣の違ったPV2、その中で公開されたOPやED、全てが頭から飛んでいってしまうほどの一大事。
これをもって、ボク個人のテンションはおろか、期待までがドン底一歩手前まで落ちていくことになりました。

余談ですが希望的観測として、紅葉狩り釣り女子キャンプは家族物語としての締め括りになり得ないため、ラストに「結婚式」が来たら良いかな……と淡い期待を始めたりしたのもこの辺りだった記憶。

放映開始前のプロモーション

そんな風に、やはり一縷の望みは捨て切れない辺り腐っても原作読者。
具体的な日付は忘れましたが、ひより小春恋ちゃん3人のCVを担当する方の配信特番も、そういうプロモーションの仕方に対する疑問や視聴の苦行感を若干抱きつつ、何かしら新情報目当てで食らいついていました。尚、当日はTwitterにもリアルタイムで情報が投下されていたので、ボクのような偏屈人間が無理に見る必要はなかったオチ。
一方、アニメ1話直前の特番はボク自身スルーしていたものの、視聴していた近しい方の1人から嬉しい話を聞かせてもらいました。曰く「ひよりの中の人からも『スローループは (釣りと) 家族の物語だ』という談があった」と。
これは素直に嬉しかったものです。ひよりの中の人、もとい久住琳さんは本作がTVアニメ初主演とのことで。初めては何でも印象に残りやすいですし、今後キャリアを積んでいっても、折に触れて本作を思い出の1つに上げてもらえたら、と1人の原作読者として願うばかり。
もっともこれは他の中の人方にも多かれ少なかれ感じていることですが…… (ある意味では間違いなく虫の良い話だと自覚もしつつ)

また、応援イラストでは第6弾を個人的に飛び抜けて気に入っています。
美しい渓流の中で釣りに興じる一枚絵のクオリティもさることながら、奥にいるひよりが可愛さの中にちゃんとカッコよさを窺える雰囲気なのも好感がもてました。
『しあわせ鳥見んぐ』は、作画面における精細さに関して言えば際立っている作品。その強みはここにも出ており、本当に嬉しかったモノです。

アニメ1話

とまあ、そうして迎えた今年1/7の初回放映。原作の該当話数は1話、2話、3話冒頭なので実質原作2話分ですね。
一言で言えば、やはりボク個人が危惧していた通り、典型的な「原作を越えられなかった1話」といったところでした。
この1話では信也さんの旧知の釣り人とのやり取りを増やし、信也さん存命時のひよりに関して描写の補完を入れたり、冒頭の釣りシーンで実際のキャスティングに尺を割いて見せながらもう少しひよりの孤独を強調したりしてほしかったんですが、ほぼ1話と2話を繋げただけで、こともあろうに演出面も、デフォルメ部分のような「映像化すると浮きやすい部分」がほぼ据え置きという、取れ得る策として想定していた限りでは駄目なほうのパターン。今後もベースがこれになるのだろうと思うとじわじわ鳩尾が痛んでくることに……
それでも原作の地力が高いので、見れない出来にはなっていないのが幸いとして、その癖妙な解釈や改変が入っているのも見過ごしがたかった。
例えばAパートラストでひよりが小春に手を握られた時や、Bパート (原作2話分) において海から帰る途中で小春に自分を名前で呼ぶよう言われた際の、必要以上に尺を取った恥ずかしそうな表情。単純にくどいですし、家族物語である本作の魅力を阻害する読み方へ誘導しかねない。
あるいは同じくBパート、ひなたさんと気まずくないのか問われた小春の「まー ちょっとは!」の表情は、原作だと小春の中にも一つありそうと思わせる単純な感情に留まらない笑顔だったのですが、これが普通の笑顔になっていたのが特に惜しまれました (ボクだけかと思っていたら同じようにここの変更をもったいなく感じていた原作読者の方が他にも一定程度散見されたため、妙によく覚えています) 。

尚、アニメ1話で特筆すべきポイントについては、他の視聴者の方が書かれている以下の記事が詳しいでしょう。

スローループの映像化が素晴らしいという話(アニメ1話)
https://smajet.net/anime-slowloop-1

どれも的を射た指摘であり、アニメで付加された描写を上げるなら分かりやすい記事です。説明が冗長になりがちなボクが列挙していくより簡潔で非常にありがたい。一部原作と重複する部分もありますが。
ただ「映像化によって登場人物が動く」のを念頭に置けば、特に釣り面を考慮しても動画として高いクオリティが必須と言って良い以上このくらいは当たり前のようにやってほしい……という点 (主にBパート) や、暗喩としての描写ないし構図はシナリオ面および映像としての根源的な魅力を保証するのではなく、押さえるべきポイントを押さえた上での付加価値に該当する (主にAパート) 、という点を差し引くと、この1話がアニメとして格別なほど優れているワケではない、というのがボクの立場です。

他、スローループが家族物語であるゆえに、親側のCVも気になっていたんですが、こちらのほうはベテランの方が揃っており、そちらの各氏に関して (この時点で) は一定の安心感をもって視聴できたところ。

アニメ2話

1/14、原作の該当話数は3話、4話です。ひよりの幼馴染・恋ちゃんがアニメでは本格登場。
これでもまだ見るに耐えるほうですが、2話としてはテンポ以上に、こういった構成となる回自体もまだ早い印象があるエピソードでした。
この段階ではもう少しひよりと小春の2人を掛け合いで印象づけてほしかったところで、原作においても特に恋ちゃんの印象を強めた話数は4話になるため、話数単位でカウントするならアニメでもそれくらいのタイミングで良かったレベル (この辺りは個人的感覚もありますが) だったのに……
アバンが恋ちゃんの顔見せになり、AパートでもBパートでもラストで恋ちゃんの描写が入るため、恋ちゃんが軸のエピソードである印象になってしまうのがまた悔やまれたポイント。
こういった部分が結果として、尺に対し度を越して詰め込みすぎな印象を間接的にも強めてしまいました。

尚、注目していたポイントである親側のCVに関しては、良太さん (恋パパ) の中の人がハマり役で、良い意味の驚きを見たものでした。
過去作で「普段はお調子者」「いざという時は周囲への配慮を欠かさない」「家族に対する愛が深い」といった共通点のある登場人物を演じていた印象の強い勝杏里氏が、それと通ずる雰囲気でありつつきちんと差別化された芝居をしているのはとても嬉しかった。
一方、もう一人アニメ初登場だった信也さんは、非常に若々しい印象を受けました。もしやひなたさんより年下だったのだろうか、などと想像したほど。

アニメ3話

サブライターの大知慶一郎氏が脚本として初登板した回でした。1/21、原作の使用話数は5話と6話。
原作1話2話で一人称視点を担ったひよりが、「気まず」さに耐えられずディスコミュニケーションを発生させてしまった一誠さんと向き合ったり、小春の言葉を受けて過去から1つ救われたりするなど、原作1巻でも山場となるエピソード。
こういった回で、テント設営に関わった一誠さん側の描写を入れ (当の一誠さんに関しては台詞に頼らず画で見せている辺りアニメとしての魅せ方を理解している) 、補完した辺り、それまでより一段上の仕上がりです。台詞も細かいところがいくつか掛け合いとしてテンポを上げる形になっており、再三言っている「最適化」が要所でなされている回でした。
自分で初めて釣ったイワナの旨さを言葉に出さない小春のアクションも上手く映像化されていました。こちらは原作にもある描写であり、ちゃんと魅せる出来になっていたのは演出の賜物でしょうか。
川釣りのロケーションを鮮やかに映す美術や、場面場面に寄った劇伴なども込みで、アニメ映えする要素を本アニメ化においては充分堪能できるほうの仕上がりだったと言えるでしょう。

ただ、小春が初めて自分で獲物を釣る回であったのに、釣り描写がそれまでと同じく、静止画の原作に毛が生えた程度の水準だったのは気になったところでした。
一枚絵のカットや動きの少ないカットを細かく切り替え、その上に効果をつけてみせるという、どちらかと言えば漫画でやるような作法を映像化でやる愚は珠に傷。

ちなみに恋ちゃんの弟・隼人君はここで初めて声を出す場面が見られました。虹君虎君よりはお兄さんですが、アニメだと思っていたよりは本人もわんぱくっぽいというか、アクティブな面が強そう。

アニメ4話

原作の使用話数は7〜9話。1/28放送、1週間前から一転し悪い意味で唖然としたエピソードでした。
2話分でも駆け足になりがちなのに3話も詰め込むなよ、それもそのうち1つがよりによってあの「原作7話」とかトチ狂ってんのかよ……などといった思いは放映当時から今まで変わりません。演出面も敢えて言及するほど際立っている部分はなく、正直見返すのも苦痛になるレベル。
まあ、これも尺からすれば明らかなキャパオーバーである証左の1つなんですが……Bパート後半 (原作9話分) バイト終わりから夜に移行した直後で不自然にやり取りが削られ、接続がおかしくなった初歩的破綻などはもはや擁護のしようもありません。
せっかくの良い劇伴が忙しなく変わりすぎる体験なども今話は顕著で、やはり残念極まりない。
せめてボクのような悪感情を抱えない視聴者だけでも楽しめればと思っていたにも拘わらず、やはり他の視聴者の方も少なからず「流石に進みが早すぎる」と思っていたようでした。あれはまあまあヘコむもんだった……

親側のCVは玲子さん (恋ママ) が初登場。ひなたさんの抜けたところを支える安定ぶりはしっかり感じられました。

アニメ5話

2/4、原作の使用話数は10話と11話。4話ほどではありませんが、鼻につく箇所が目立った印象でした。
漫画表現をそのまま使っている弊害がここでモロに出た印象です。この演出でシリアスとコミカルを行き来しすぎるのはやはり忙しなくて仕方ない。
このコミカルテイストに必要以上の飲まれ方をしたのがひなたさんで、在りし日の家族へ思いを馳せる際の「人に振る舞えるほど〜」の芝居が軽くなりすぎてしまっていたのが残念だった (ひなたさん自身が重い空気を回避する傾向にあるのは物語が進んでいくと分かることですが、それを考慮しても浮きすぎていた印象) 。
音響におけるこういった部分でのディレクションは、かなり作品としてズレている感があります。

今話は周囲の目により自分の好きなものを好きだと言えなくなっていた二葉ちゃんの涙や、その二葉ちゃんがひよりと友達になる、2巻の山場の1つがあり、それらだけ芝居面の補完がなされていたものの、こういった箇所もそれまでの積み重ねがモノを言うポイントであるため、あからさまな感動を狙いに行った印象しか残りませんでした。
1話Bパートで見られたような芝居の積み重ねをもっと拡充することにより、登場人物の生きるありのままの姿をずっと見せてきておけば、描写の説得力も格段に増したハズなのですが……

脚本面では、原作をそのまま繋げる形にした結果、二葉ちゃんのバックボーン描写をAパートとBパートの冒頭でそれぞれ繰り返している冗長さが噴飯もの。こういうところを上手く一箇所にまとめれば、もう少し芝居に割ける尺が増えたものを。

アニメ6話

2/11放映、原作の使用話数は16〜18話。3話分のエピソードを突っ込んでいる割に4話ほどの破綻がないのは、16話17話が概ね前後編と受け取れる構成になっているのと、3話に引き続き大知氏がサブとして脚本に入っているからでしょうか。
もちろん詰め込みすぎの弊害もあると言えばあるものの、ただ原作を繋げただけではなく18話のオチを割愛した上で、代わりに17話終盤「来年こそはフライでシイラを釣る」宣言で〆となっている辺りなど、最低限のまとめ方にはなっているのが幸い。

しかしやはり、釣りのシーンは3話と同様の理屈で、映像面での緊迫感がせっかくの劇伴にも負けている印象。
ひよりのフライに食いついて走りまくるシイラを水中から捉える1カットがある当たり、これでもまだマシなほうと言うべきなのだろうか……

一方で、楓さんによる料理のシーンはKOHARU'Sキッチンより力が入っている感を受けました。
釣りほどではないにせよ、料理もそれに次ぐ本作の魅力の1つなので、力が入っているのはまあ素直に喜ばしい。
その楓さん、今動画で見るとひよりに比べればまだカッコよさが保たれているなとも思ったり。ひよりにも (立ち絵ほどカッコよさが損なわれているワケではないものの) もうちょっと拘ってほしかったなあ。

アニメ7話

ボクの希望的観測が潰えた回。2/18放映、原作の使用話数は12〜14話です。
原作においてこれまた長期的な役割をもっている重要エピソードの14話、「結婚式」回がこの中に突っ込まれており、トチ狂っ(略)などと思わされること頻り。
こういうエピソードで "MUGI TEA" ばかり話題になってしまうのが、様々な意味で本当に本作の不幸と言わざるを得ない。

ただ、どちらかと言えば尺計算の煽りを受けているのは12話と13話のほう。こちらもこちらで、ひよりから小春や恋ちゃんら周囲に対する思いや、きょうだいの距離感について触れられているため、それまでの流れに関する区切りとして重要な役割をもっているゆえ……
やはりそもそも3話分の量をアニメ1話にまとめざるを得なくなるほどの詰め込みすぎが間違いだったと言わざるを得ません。二葉ちゃん周りのエピソードを総括する意味合いが弱まってしまったのも難。

更に言えばこの回、個人的印象では、原作そのままの描写が悪い意味でも強く見られすぎた回として7話に匹敵するエピソードです。
とりわけ「フィッシング詐欺」作戦のため待ち合わせていた二葉ちゃん一行を迎えるひより小春恋ちゃんの3人が私服で1枚に映るあの静止画、原作の扉絵そのままなのが間に合わせ感満点でちょっと苛立たしい。
それとも、然るべき描写ができていないのに、こういうところだけファンサービスでも狙っているつもりなんでしょうかね。悪趣味な邪推だと自覚していますが、それでもこちらの感情は却って逆撫でされた格好。

結婚式でシェフを呼ぶ一誠さんの芝居に聞き応えがあったのは救いでした。この辺りになるとひよりたちの芝居も親側に並んでいいくらいには慣れが見えてきて、(ディレクションのおかしさを除けば) 安心感が増してきた印象はあります。

アニメ8話

2/25放映、原作の使用話数は19〜21話。まーた3話も突っ込んだんか!!!!!
原作で言えば3巻分に当たるのは14〜21話ですが、アニメでは2話半で消化された計算になります。正気か???
しかもこういうエピソードでさえ「ぱくっ」ばかり話題になってしまうのが (以下略) 。
今話もサブ脚本のハズなんですが、配慮もなくはないと言えど詰め込みすぎへの対処も限界が見えたところでしょうか。

林の中を歩きながら渓流釣りにおける暗黙の了解を語らうシークエンスは、既に「足で釣る」シークエンスをその前に入れているだけに、もう少し映像作品として練ってほしかったところでした。美術や劇伴で間が持てるようにするのも限界があるでしょうに……イワナを狙う場面をオリジナルとして補完するとかがあればなあ。
他方見事小春がイワナを釣り上げる場面は、釣り描写としては短めながら、本映像化においては一二を争う出来でした。……いや悪いワケじゃないんですけど、あれで一二を争ってるのか……

他、一誠さん側の描写について、ひなたさんとの通話で話す場面や、ひなたさんの実家に着いてダッシュしてくるアクションがちゃんと補完されており、……まあ最低ラインを守っている思う面はあります。概ね原作通りのラストシーンも、一応溜息は下がるモノ。
また、裕子さん (小春の産みの母) 、修さんと恵美子さん (ひよりの祖父母、ひなたさんの両親) が出てきたのもアニメでは今話が初。芝居そのものは順当でしたが、お団子について恵美子さんがひなたさんに苦言を呈す場面は、個人的には原作寄りのディレクションであってほしかった。
更に言うと、作画面で修さんの髪型がヘルメットみたいだったのも、非常に気になりました。

アニメ9話

3/4放映、原作からは23話と24話が使用。
Aパート導入が若干コミカルに引き摺られすぎた以外、やはり順当な出来栄えではあるでしょうか。小春の芝居が良かっただけに、一誠さん共々もう少し落ち着いた芝居のディレクションであればなあ……
ひよりが「 (キャンプ) 一緒に行かせてください!」と訴えた直後、一誠さんとひなたさんが並んで映るカットは、さり気ないながらもまさに2人の両親ぶりを示す描写と言って良いでしょう。

釣り描写も、獲物を狙う小春の描写はきちんと一定の間を取ってなされていました。こういう些細なポイントが緊張感を高めてくれるだけに、尺は潤沢に取ってほしかったところなんですよね。
ただ肝心の釣りそのものはあっさりしているので、もっと他のところにも力を入れてもらえればとちょっともったいなくも思ったり。

尚、小春が恋ちゃんから怖い話を聞くシークエンスはやや端折られており、その話の内容も原作とは異なっています。
その変更自体は問題ないとして、恋ちゃんから怖い話を引き出す流れが弱まってしまい、眠れなくなった小春にちょっと同情しにくくなってしまったのが原作とは別の笑いどころでしょうか。

また今話は特殊EDでした。個人的感覚の話ですが、こっちの楽曲のほうがEDとしてしっくり来た。

アニメ10話

1話1話がこれくらいのペースで進めば良かったんだけどなあ……とここに来て (ある意味) 切なくなったエピソード。3/11、原作26話と5巻書き下ろしパートが使用されています。
原作換算で1話分+αの量であるため、本映像化では最もゆったり視聴できる回と言って良いでしょう。

スローループとしては珍しく学校での描写が多い回。この点は原作譲りです。
釣りが主軸に置かれ、舞台も学校外になりがちなため、なければないでまあOKな描写ではあるものの、ディティールの積み重ねに一役買っている部分でもあります。
小春のクラスは本当に賑やかで楽しいですね。小春の友達の1人である咲良さんがクラスメートたちを眺めて物思いに耽る一幕が5巻カバー裏 (おまけるーぷ) メロンブックス特典リーフレットのおまけるーぷ (2022/04/21修正) にありまして、そちらは使われませんでしたが、本当に仲の良いクラスなのが推察できます。その空気感は本エピソードでも、小春と加藤君たちの掛け合いから伝わるレベルでしょう。
ひよりと恋ちゃんのクラスはそれに比べると描写が少なめなものの、その中で、2人のコンビがクラスにあっても堅いのを示している印象。あとはそこに来て、ひよりを頼る女生徒2人が妙に気になる可愛さでした。

演出面では原作の該当エピソードにおおよそ準拠しており、その通りの描写が多いため、特筆すべき箇所はそうないところ。脚本面でも然りですが、演出面と比すれば細々とシナリオの流れに配慮があるだけマシです。お客さんがこないと嘆いているところにひよりから追撃を食らう形になった小春がちょっと不憫。
これでも安心して見られるほうに位置するのは、やっぱり本映像化の悲哀と言うべきだろうか……

アニメ11話

この辺りが終盤になるだろう、とボクが覚悟したエピソードすら更に踏み越えていったエピソード。3/18放映、原作の使用話数は27話と28話です。
原作でも白眉の出来だった早朝シークエンスを除けば、やはり概ね原作通り。その中で、恋ちゃんから藍子ちゃんへ渡されたぽきっと (ポッキー) が、少し原作と意味合いを異にしており、2人の心理的波長が共鳴している示唆となっています。無論この暗喩自体が映像作品として評価を上げるものにならないのは上述した通りですが、それでも今話は1話同様原作の地力がそのまま残っているため、考察を目的として汲み取る意義はある描写たり得ていました。

釣り描写に関しては、Aパートのほうはそれまでと同等。
Bパートにおける早朝の釣りについては、このアニメ化を全話通して見ればハイライトだったと言える出来でしょう。まあ、原作中でも現状屈指の山場の1つであり、ここが押さえられていないと釣り描写が総じて無意味同然になってしまうほどの超重要シーンでもある、大前提のような箇所という話なので、ここだけ押さえられてもあまり褒められたものではありませんが。これくらいを基準にしてほしかったなあ……

さて。件の早朝シーンについては、例外的に演出面でも大幅に強化がなされていました。
カメラ上2人に寄ったカットが多く、相対している雰囲気がきっちり出せていたように思います。これはまあ、変に捻るような場面でもありませんが。
少しずつ明るくなり、日が昇っていく朝焼けを背景にしている辺りなども、美術の力そのものも然ることながら、これもまた原作の地力に任せてメタファーとしての意味合いを色々と読み解ける仕上がり。ちなみにボク個人の考察はこんな感じです。
まあともあれ、やはり全編通してこれくらいのクオリティを基準にしてほしかったなあ……

アニメ12話

個人的感情としては、4話や5話に次いで感情を逆撫でされた回となってしまいました。最終回なのに。
3/25日放映、原作の使用話数は22話と29話。
原作4巻において22話→27話&28話の流れだったからこそ一貫したシナリオとなっていた、その導入を総括より後に持ってくるのは、無闇にその描写の意味合いの大幅な変化を招いてしまう危険性を孕んでおり、実際にこの映像化でもそれを拭い切れない形となったワケですが、この辺りが果たして理解されているのだろうか……理解されていないからこうなったんだろうなあ……
まあ、この過去エピソードが今話でちゃんと「締め括りの回で心理的にも釣りの一面へと立ち返る登場人物」として活きているので、まだマシなところでしょうか。

Bパートにおいては、これまで名ありで出てきた人物が総登場。これ自体は喜ばしいんですが、捌き方の面でそのほとんどが本筋に絡んでおらず、サービスの域を出ていない辺り、この映像化におけるメイン脚本の底が見えたような一幕でもありました。
一誠さんの「ずっとインドア派だったから小春を〜」とか、作中既にたくさん釣りで山間まで出てきていたのを考えれば、あまりにも今更。
そもそも、こんな示唆の欠片もない直截的な発言をするような場面自体、他のシリアスな描写と比較して浮いています。そのため良い印象はありませんでした。アニメ3話の一誠さんに関するシークエンスのように、言葉頼みとなるのを避けて表情や雰囲気で魅せる方法を取ってくれたほうが、映像作品としては良かった……

あとはせいぜい、ひよりから誕生日プレゼントを貰えていないことで不満を顔に出し、却ってひよりを戸惑わせてしまった小春の振る舞いに原作から少し意味合いが付加されている点でしょうか。この辺り、原作読者ならすぐに意図を汲み取れる部分であるものの、結局映像化としての完成度には関わっておらず、もっと他の描写に配慮しろよと言わざるを得ない仕上がりでした。無念。

まとめ

冒頭で述べた通り、本作『スローループ』の原作は現在のきららで最高レベルに位置する作品です。
そんなタイトルのアニメなればこそ、制作陣とその采配次第でもっと良くなるハズでした。
しかし結果は、ディレクションの段階で原作の長所へおんぶにだっこになりすぎたため、脚本及び演出の面で、動画としても引き出され得るハズだった魅力の大半を失った、大別して埋もれるであろう平凡なアニメ化。
本作の映像化がこのクオリティに留まってしまったのは、本当に残念と言うよりありません。

終わりに

こんな記事を書きつつも、アニメから本作の物語に深く魅力を感じ、詳細な感想や考察をしたためたり、原作を読もうと思い至った方も一定数いらっしゃり、原作読者としては本当に嬉しかったものです。
ボクがこれでもアニメへの所感をまとめようと思ったのは、そういった方がいらっしゃったためにボクも自分なりの形で向き合った証明をしておこうと考えたからであり、本作の魅力を読み解こうと思ってくださった方々の姿があったからこそ、ただもやもやしたままアニメを終えていく事態を回避することができました。

なので最後に改めて……アニメ『スローループ』をご覧になった上で、もし本記事をここまでご覧になることができた方がいらっしゃいましたら、お伝えしたいことがあります。
そのアニメに満足できたのなら、ぜひともこの記事は偏屈な一原作読者の感想として流し、忘れてくださって構いません。
ですが、満足できない部分があったり、満足できてもこの記事を忘れられなかったり、そもそもアニメより漫画に親しみをもっていたりした場合は、ぜひとも原作をお手に取っていただきたい。
あれだけの密度で進んでいて尚カットされた部分もあれば、より強く印象に残るであろう描写も多くありますし、シナリオの強みは言わずもがなであるゆえ、きっとお気に召すハズですので。

まだまだ原作は続いていますし、物語が小春の過去にようやく踏み込み始めたりとそれまでを凌駕するほど盛り沢山。
そんな『スローループ』を、どうか今後ともよろしくお願い致します。

Written on 2022/04/01